top of page

温浴施設 品質探訪❷

湯檜曾温泉探訪


清流沿いに佇む、源泉かけ流しの温泉宿

7月の終わり、温泉好きの家内と二人、群馬県利根郡みなかみ町湯檜曾にある、1922年(大正11年)創業の老舗温泉宿「林家旅館」を訪れました。

湯檜曾温泉 林家旅館
湯檜曾温泉 林家旅館

都心から車で約2時間半。

豊かな自然に囲まれた湯檜曾温泉で、24時間源泉かけ流しの温泉を楽しめる宿です。

昭和初期には、文豪・与謝野晶子、鉄幹夫妻も投宿したという歴史ある温泉宿。客室は11室とこぢんまりしていますが、その分、静かに温泉を楽しみ、部屋食を味わいながら、ゆったりとした時間を過ごすことができます。


静かな宿で、ゆっくり温泉を楽しむ

到着すると、受付の女性が丁寧に案内してくださいました。案内された和室は、二人で過ごすには十分な広さ。清流側に面しており、窓から感じられる自然の雰囲気も心地よいものでした。

部屋からみる渓流
部屋からみる渓流

張り替えたばかりと思われる畳もきれいで、客室に入った時から、落ち着いた時間を過ごせそうな安心感がありました。


そして、今回のお目当てはもちろん温泉です。

1階には二つの浴室があり、男女時間交替制となっています。

最初に入ったのは、比較的小さな浴室。洗い場は二つ、浴槽も3人程度が入れるほどのこぢんまりとした造りです。

しかし、浴槽の大きさ以上に印象的だったのが、豊富に流れ込む温泉。事前に聞いていたとおり、吐水口からは温泉が絶え間なく注がれていました。

少し熱めの湯にゆっくり浸かると、体がじんわりと温まり、何とも心地よい。

大きな浴場で開放感を楽しむ温泉もありますが、こうした小さな浴槽で、静かに源泉を楽しむのも温泉宿ならではの魅力だと感じました。


林家旅館の温泉

今回いただいた温泉情報は以下のとおりです。

・泉質:アルカリ単純泉(無色透明)

・pH:7.9

・泉温:41.4℃

・利用量:80リットル/分

・源泉かけ流し

・加水・加温なし、循環・消毒なし

豊富な温泉が一晩中流れ続ける、まさに「源泉かけ流し」を楽しむための温泉宿です。

ナトリウムや塩素、メタケイ酸などを含む温泉で、入浴中はもちろん、湯上がりにもすっきりとした爽やかさを感じました。

「温泉に入りに来た」という目的を、素直に満たしてくれる宿です。


環境品質の視点から感じたこと

ここからは、温浴施設の環境品質アドバイザーという立場から、実際に施設を利用して感じたことをご紹介します。

もちろん、専門家として施設を「採点する」ことが目的ではありません。

実際に利用するお客様の立場で、清潔感、安全性、美観、そして「また来たい」と感じる環境がどのように維持されているかを見ることを意識しています。


更衣室

更衣室は比較的コンパクトですが、洗面台を含めて清潔感が保たれていました。

大規模な温浴施設と比べればスペースに限りがありますが、必要な機能がきちんと維持されているという印象です。


浴室

浴室で特に印象に残ったのは、床面の状態です。

床に気になるヌメリはなく、洗い場足元の排水溝のステンレス製の蓋にも、目立ったヌメリや汚れは見られませんでした。

また、カラン周りについても、蛇口、シャワー、壁面などに目立った汚れやヌメリはなく、日常的に丁寧な清掃が行われていることが感じられました。

温浴施設では、設備そのものの新しさだけではなく、こうした日常的な清掃・管理の積み重ねが、利用者の感じる「清潔感」に大きく影響します。


洗い場の鏡

一方で、洗い場の鏡には、経年劣化による黒ずみが見られました。

ただし、いわゆる水垢などによるウロコ状の被膜はほとんど見られず、鏡表面の親水性も維持されていました。したがって、清掃不足による問題というより、鏡そのものの経年劣化による美観上の課題と考えられます。

今後、設備更新の機会があれば、鏡の交換を検討することで、浴室全体の印象をさらに高められるのではないかと感じました。


小規模施設だからこそできる環境品質

今回の滞在で改めて感じたことがあります。

それは、小規模な温浴施設ならではの環境品質の維持方法があるということです。

スーパー銭湯などの大型施設では、利用者数や施設規模、スタッフ数などの関係から、すべての場所をこまめに確認・清掃することには一定の難しさがあります。

一方、小規模な温泉宿では、施設の規模がコンパクトであることを生かし、日常的な清掃を丁寧に積み重ねることで、清潔感を維持することができます。

林家旅館の浴室からは、まさにそうした日常管理の積み重ねが感じられました。


総評

林家旅館は、豊かな自然の中で、時間を気にせず源泉かけ流しの温泉を楽しめる、温泉好きには心休まる宿でした。

客室での食事も、他の宿泊客を気にすることなく、夫婦二人でゆっくり食事を楽しめるという点で、今回の滞在の大きな魅力でした。


一方で、年齢を重ねた私たちにとっては、畳の部屋で昔ながらのお膳を使って食事をするスタイルは、少し気になるところでもありました。

正座や胡坐が負担になる方も少なくないと思いますので、将来的には椅子を使った食事にも対応できるようになれば、より幅広い年代の利用者にとって過ごしやすい宿になるのではないでしょうか。


環境品質の面では、日常清掃が適切に行われ、浴室の清潔感や安全性がしっかり維持されていると感じました。

一方、洗い場の鏡については、経年劣化による美観上の課題が見られました。こうした部分への対応を行うことで、施設全体の印象をさらに高められる可能性があります。


SQS(SPA Quality Score)による環境品質簡易評価

【項目】   【コメント】

おもてなし   ★★★★★

清潔感     ★★★★ 

美観      ★★★

安全性     ★★★


環境品質総評

「日常管理は良好。鏡などの美観面を整えることで、さらに魅力が高まる。」


「きれい」だけではなく、「また来たい」へ

温浴施設を訪れると、どうしても「施設が新しいか」「設備が充実しているか」といったハード面に目が向きがちです。

しかし、実際に施設を利用してみると、利用者が感じる快適さは、それだけでは決まりません。


床にヌメリがない。

洗い場が清潔に保たれている。

鏡が気持ちよく使える。

スタッフの案内が丁寧である。

静かに温泉を楽しめる。


こうした一つひとつの積み重ねが、施設に対する安心感や満足感につながっていきます。

「施設はきれい」で終わるのではなく、「またここに来たい」と感じてもらえる環境を維持すること。

それが、温浴施設における「環境品質」の役割なのだと、今回の湯檜曾温泉への訪問を通じて改めて感じました。


本ブログではこれからも、温泉や温浴施設を訪れる一人の利用者としての目線と、温浴施設の環境品質に携わる専門家としての目線、その両方から、さまざまな施設をご紹介していきたいと思います。

なお、本稿における環境品質の評価は、あくまで実際の利用者として訪問した際の簡易的な所感です。施設の優劣を評価することを目的としたものではなく、それぞれの施設が持つ魅力と、より快適な環境づくりのヒントを皆様と共有することを目的としています。




コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。

© 2026  Kankyo Eisei Frontier LLC All Rights Reserved.

bottom of page