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SQAケーススタディ01-多摩源流温泉 小菅の湯

「環境衛生管理の内製化が生み出す環境品質とは」


環境品質診断結果:

総合SQS評価 84.3点 評価ランク Good


SQA-温浴施設管理責任者インタビュー


多摩源流温泉 小菅の湯

施設管理責任者 村上伸哉氏に聞く





(聞き手)合同会社環境衛生フロンティア

代表 阿部 克範

          

1994年に開業した多摩源流温泉 小菅の湯(山梨県北都留郡小菅村)は、

標高約730mの豊かな自然に囲まれた日帰り温泉施設です。

四季折々の自然を眺めながら、ゆっくりと温泉を楽しむことができ、

日頃の疲れを癒す憩いの場として、多くの利用者に親しまれています。

非火山性の温泉である小菅の湯は、pH9.98のアルカリ性温泉で、入浴後の肌がつるつるになることから「美人の湯」としても知られています。


小菅の湯では、清掃を含む環境衛生管理を内製化しており、施設責任者を中心に、日々の管理・運営に取り組んでいます。

では、なぜ内製化という運営方法を選択したのでしょうか。そこには、地域性や施設規模といった背景だけでなく、利用者に快適な環境を提供するための現場での工夫や、内製化ならではの課題があります。


今回は、施設管理責任者の村上伸哉氏に、環境衛生管理の内製化を始めた背景、そのメリットと課題、環境品質を維持するために大切にしていること、そしてこれからの施設運営について、率直なお話を伺いました。

小菅の湯は、地域の健康増進・観光を支える温泉施設

阿部 本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。今回は、小菅の湯様が取り組まれている環境衛生管理、とりわけ清掃・設備管理の内製化についてお話を伺いたいと思います。まずは、施設の概要と責任者としてのお立場を教えていただけますでしょうか?


村上 当施設は、東京と山梨県のはざまにあり、標高約730mの豊かな自然に囲まれた日帰り温泉施設です。地元の方はもちろん、登山客、ツーリング客の方々にもご利用いただき、併設している道の駅も含めた小菅村の健康増進・観光エリアです。

私は、入社以来、施設管理業務に従事しており、現在は環境衛生管理、すなわち衛生、安全、美観、運用管理の責任者として、かなり幅広い業務を行っております。人員に限りがありますので、責任者イコール現場担当という位置づけで、すべてに関与している立場です。


遠方から訪れるお客様に、「また来たい」と思っていただくために

阿部 施設の特長や、お客様に最も大切にしていることを教えてください。


村上 当施設は、地理的にも決して交通の便が良いとは言えず、お客様は長い時間をかけて来られます。ですので、できるだけ長い時間を快適に過ごしていただけるよう「おもてなし」には細心の注意を払っております。


阿部 快適な空間、すなわち温泉、食事、娯楽、自然とのふれあいといった「おもてなし」の提供ですね。


村上 そうです。また是非来てみたいというお気持ちになっていただくことですね。


「選択した」というより、内製化せざるを得なかった

阿部 スーパー銭湯など、大型温浴施設の環境衛生管理、とりわけ日常清掃業務は、その多くが外部委託されているのが実態です。当施設では環境衛生管理の内製化を実施されていますが、その背景をお聞かせいただけますか?


村上 当施設が「内製化」を選択したというより、選択せざるを得なかったということかも知れません。まず、当施設は小菅村が100%出資の財団法人という形でスタートしております。民間事業者とは異なり、潤沢な予算で運営できるというわけではありませんでした。その結果、必然的に「内製化」の道を選択せざるを得なかったということです。また、地理的要因も背景にあります。近隣エリアに温浴施設に対応できる業者も多くはありませんでした。


阿部 なるほど。予算面と地域的な事情から、外部委託ではなく内製化という道を選ばれたわけですね。内製化を始めた当初は、いろいろとご苦労もあったかと思いますが、具体的に教えていただけますか?


村上 私が当施設で勤務を始めたのは8年前です。異なる業界からの入社でしたので、わからないことだらけでした。それでも正直なところ、当時の衛生管理、日常清掃のレベルは低かったと思います。温浴施設の運営管理、特に環境衛生に関する組織的な知識の欠如が一番の要因だと考えます。


阿部 村上さんが管理責任者になられたのはいつ頃ですか?


村上 入社4年目より、実質上の管理責任者として施設管理運営を行うようになりました。


レジオネラ対策から日常清掃まで、現場で担う環境衛生管理

阿部 現在の環境衛生管理状況を具体的に教えていただけますか。温浴施設にとって重要なレジオネラ属菌対策、安全対策、そして日常清掃業務などについてお願いします。


村上 当施設は源泉温泉ではありますが、循環配管システムを採用しております。

したがって、レジオネラ属菌対策としては、定期的な過酸化水素水による配管洗浄と合わせて、週1回の高濃度塩素消毒を実施しております。これらもすべて「内製化」で行っております。日常清掃については、当社スタッフ2人が営業前に2時間ほどかけて行っておりま。浴室スペースを考慮した必要人数です。安全対策としての床の滑り止めも、自分が持っているスキルの範囲で行っております。


内製化の強みは、「品質を自分たちで確認できること」

阿部 内製化を続けられていて、そのメリット、デメリットをどのように感じられていますか?


村上 当施設の事業規模を考えると、やはりコストメリットではないでしょうか。アウトソーシングを行っている近隣の同業施設もありますが、よくやっているなと思います。また、メリットとして考えられるのは、品質維持の可視化ではないでしょうか。特に日常清掃については、管理責任者である私も自ら現場で清掃を確認しますので、不備があれば、その場で対応できます。これは、アウトソーシングにおまかせという形では困難なところかと思います。また、清掃方法、スキルの標準化、いわゆるスタッフ教育も自ら行えるというメリットがあります。


阿部 なるほど。品質維持の可視化と標準化、そしてスタッフ教育というメリットですね。

では、逆にデメリット、弱みは感じられますか?


村上 やはり、温浴施設に特化した専門知識ではないでしょうか。自分なりにいわゆる「特殊清掃」的なことは行っておりますが、プロスキルがあるわけではないので、試行錯誤の連続です。例えば、カガミ・ガラスのうろこ被膜、石材タイルに付着・堆積したエフロ・スケール、浴室床のヌメリ、排水管の洗浄など、もっと効率的にレベルアップしたいことは沢山あります。それと、リスクマネジメントの一環として、清掃マニュアル、業務報告書等、運用管理レベルのアイテムと管理方法を充実していく必要があります。


い道具とOJTが、内製化の質を支える

阿部 環境品質を維持する上で、一番大切にしていることは何でしょうか?


村上 私は道具(アイテム)の重要性を重視します。清掃スタッフは日々一生懸命にやっています。それでも、落ちない洗剤とスポンジでは桶やイスの水垢は取れませんし、浴槽内のヌメリや水垢も落とすことはできません。目的に合わせて、中性、アルカリ性、酸性の洗剤を使い分けることで、効率と成果が得られると考えます。カガミやガラスの水切りに使用するスクイジーも、価格によって明らかに機能性が異なります。施設維持に必要なアイテムを挙げれば切りがありませんが、最良のアイテムの採用とOJT教育が「内製化」の質の維持と改善を可能にしていくと考えます。


「衛生・安全・美観」は、妥協しない

阿部 管理責任者として「ここだけは妥協しない」というポイントはありますか?


村上 当施設は温浴施設です。お客様は当施設の温泉を楽しみに遠路来られます。したがって、衛生面、安全面、美観面において、できうる限りの「おもてなし」をさせていただきます。浴室内の水垢、ヌメリ・滑り、臭い、カビ、コケなど、不快な思いをおかけしない準備をすること。ここだけは妥協しないという自負があります。


これからも内製化を続け、専門的な外部支援を活用したい

阿部 今後、環境衛生管理において、「こんな支援があると助かる」ということがあれば教えてください。


村上 当施設は今後も「内製化」による環境衛生管理を続けていきます。その上で、温浴施設全般の環境衛生管理に関わるプロフェッショナルなアドバイス(支援)が必要となります。すなわち、ハード面(機材、資材)だけではなく、ソフト面(運用管理)までのプロフェッショナルアドバイスです。


村上 今回、阿部さん(合同会社環境衛生フロンティア)に提案、実施いただく「温浴施設環境品質診断」も、当施設の環境品質をDATA(数値)で可視化、評価から改善提案までいただけるとのこと。今後の施設運営に必須のアドバイザリーサービスと評価させていただいております。


阿部 本日はありがとうございました。本日の内容は、環境品質向上に取り組む多くの施設様の参考となるよう、大切にご紹介させていただきます。


「また来たい」と思っていただける施設を目指して

―編集後記―

今回のインタビューを通して印象的だったのは、内製化そのものを目的とするのではなく、「お客様にまた来たいと思っていただく」ために、現場で何ができるかを考え続けている姿勢です。一方で、専門的な清掃技術や運用管理、記録・標準化など、内製化だからこそ外部の専門知識を必要とする領域も見えてきます。小菅の湯様の取り組みは、現場の実践力と外部の専門性を組み合わせながら、環境品質を継続的に高めていく一つのモデルを示していると感じました。

(取材・編集:合同会社環境衛生フロンティア 代表 阿部 克範)


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